美しく、そして切ない愛の物語

雪蟷螂 (電撃文庫)

雪蟷螂 (電撃文庫)

“人喰い物語”三部作最終譚。
最後となる本作「雪蟷螂」は「人が人を喰らう話」となっているが、その欲し方が何とも狂おしい。
愛ゆえに相手を喰らい尽くしたいと、女は激情を燃やす。
綺麗な情景描写と堅実に組まれたシナリオは、たとえここで全てのネタバレをしたとしても色あせることなく読む人を惹きつけるに違いないでしょう。
そしてこれは過去語りの形で出てくる、ヒロインであるアルテシアの叔母・ロージアの物語だったとしか言いようがない。魔女の谷でのロージアと敵部族の長・ガルヤの必然とも言える邂逅はこの物語の肝であり苦しくなるほどの切なさに溢れている。

そしてもう一つ、アルテシアの影武者・ルイの最後のシーンが。あれは、あんな深い感情が一体どこから沸いてくるのか、理解できてもあまりの切なさに感情が受け付けなかった。

激しい愛の物語はヤンデレ的であり、またその一言で片付けるのはもったいないほどのすばらしい物でした。このシリーズの1巻目である「ミミズクと夜の王 (電撃文庫)」を読んでいないので近いうちに読んでみたいところです。

いや、久々に痺れる恋愛物を読んだなぁ。
シリーズ完結で、次にどんな作品を出してくるのか非常に楽しみな作家ですね。